転移や逆転移を理解した看護ケアを

看護師が患者に対していろいろな感情を抱くのは、患者との対人関係が生ずる以上仕方がないことだ。ちょっと嫌な患者だなと感じたとき、自分が悪いと思い自分自身を責め立てる必要はない。これらの感情は、患者から何らかの転移感情を受けるということが生じていることが多いためだ。転移感情とは、看護ケアを受ける中で患者が看護師に対して抱く無意識の空想や感情、態度、期待などのことを指す。そしてその逆を、逆転移という。

もともと患者と看護師とは社会的な関係であり、それぞれの役割を果たすという契約関係によって成り立っている。看護師は看護ケアを提供し、患者は自分の健康問題に責任をもって取り組むのが役割だ。しかし、これらの合理的な関係に加え、互いが自覚していない心理的な相互作用というものが働いている。それが、転移であり逆転移になる。

この転移というのは、患者が主に幼児期などに重要他者との間で形成されたイメージを医療スタッフに投影していることが多い。たとえば、父親の不倫により両親が離婚した場合、医師や看護師に対して信頼をおけず、話をしないというようなことがよく起こる。つまり転移というのは、患者の幼児的感情や願望などがつくりだした人物像をスタッフに投影させる心理現象ということだ。そのため、看護師自身が感じていること、また、どうしてそのように感じるのか、加えて患者は自分に対して何を投影しているのかを考えることで、感情に振り回されることなく、必要な看護ケアを行えるようになる。

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